監修医師中山 潤一 医師(医療法人社団佳和会 理事長)
日本整形外科学会認定 専門医 / 医学博士 / 明石市医師会理事 / 明石市整形外科医会会長

立ち上がるとき、階段を降りるとき、しゃがんだ拍子に膝からポキッと音が鳴ると、たとえ痛くなくても「どこか悪いのかな」と気になってしまいますよね。
結論から言えば、 痛みをともなわない膝のポキポキ音は、その多くが心配のいらない生理的な現象です。小さなお子さまから大人まで、誰にでも起こりうるものです。
しかし、中には注意しておきたいサインが隠れていることもあります。本コラムでは、膝がポキポキ鳴る仕組みから、見逃してはいけないサイン、自宅でできる予防法までを、わかりやすく解説します。

目次
膝の曲げ伸ばしにあわせて「ポキポキ」「パキパキ」といった音が鳴る場合、その原因は、大きく分けて①関節の内部で自然に生じるものと、②関節や周辺の組織への負担をきっかけに生じる、の2つのパターンが考えられます。
「ポキポキ」「パキパキ」と弾けるようなクリック音は、関節内を満たす関節液の中に生じた気泡が弾けることで生じる音です。
関節液には、軟骨を守ったり関節の動きをなめらかに保ったりする働きがありますが、膝を勢いよく曲げ伸ばしすると、この関節液に気泡が生じ、そこへ圧力が加わったタイミングで音が鳴ることがあります。指の関節が鳴るのと同じ仕組みで、痛みがなく、その場限りで鳴るだけなら、多くは心配いりません。
膝がポキポキ鳴るよりも、音と一緒にどんな症状が出ているかが重要です。次のようなサインがある場合は、膝の内部で何らかのトラブルが起きている可能性があります。
最後の項目は意外に思われるかもしれませんが、「音が鳴らなくなった=良くなった」とは必ずしも言えません。膝から鳴る音の大きさや有無は、症状の重さと必ずしも一致しないことが研究でわかっています[1]。可動域が狭くなったり関節の状態が変化したりして、以前より音が鳴りにくくなることもあるためです。
また、痛みを伴わない音そのものは決して珍しいものではなく、必ずしも関節の機能低下に直結するわけではありません[2]。
大切なのは、音そのものより、痛み・腫れ・引っかかり感といった症状が続いていないかどうかです。ひとつでも当てはまるものがあれば、一度整形外科でご相談いただくことをおすすめします。
注意が必要なサインがある場合、背景には次のような病気が隠れていることがあります。
加齢や長年の負担で膝関節の軟骨がすり減り、骨どうしがこすれるようになる病気です。日本では患者数が非常に多く、初期にはひざの違和感や音から始まり、進行すると歩行時の痛みや階段の上り下りのつらさが出てきます。とくに中高年の女性に多い傾向があります[3]。
膝のクッション役である半月板が傷つくと、「ポキッ」という音とともに、引っかかり感やロッキング(膝が動かなくなる)をともなうことがあります。スポーツでの急な方向転換だけでなく、加齢による変性でも起こります。
膝のなかにある「タナ」と呼ばれるヒダが引っかかり、音や違和感が出るものです。膝の内側で音が鳴ることが多く、痛みがなければ経過観察となることもあります。
これらの病気は、膝がポキポキ鳴るだけでは見分けがつきません。次に、音以外に現れる膝のサインを見ていきましょう。
膝がポキポキ鳴る以外にも、膝の不調は別のかたちで現れることがあります。ここでは、注意しておきたいサインについてご紹介します。
膝から鳴る音は、ポキポキだけではありません。そして、音の種類によって意味合いが大きく変わってきます。
| 音のタイプ | 主な原因 | 注意度 |
|---|---|---|
| ポキポキ・パキパキ | 気泡が弾ける生理現象 | 痛みがなければ低い |
| ミシミシ・ギシギシ | 軟骨のすり減り・関節の摩擦 | 高い |
| ゴリゴリ・ジャリジャリ | 軟骨や骨どうしのこすれ | 高い |
「ポキポキ」が比較的安心な音であるのに対し、「ゴリゴリ」「ミシミシ」といった摩擦音は、軟骨のすり減りを知らせているケースがあり、注意が必要です。これらの音は、ポキポキとはそもそも原因が異なり、対処法も別物になりますので、別の記事でまとめています。
膝が腫れぼったい、重だるい、曲げ伸ばしがしにくいと感じる場合は、膝に「水が溜まっている」状態かもしれません。これは 関節水腫(かんせつすいしゅ) といって、関節内を満たしている関節液が、炎症によって過剰に増えてしまった状態です。
本来、関節液は膝の動きをなめらかにする大切な液体です。ところがひざのなかで炎症が起きると、体がそれをしずめようとして関節液を余分に作り出します。つまり、「水が溜まる」こと自体が、ひざの内部で何らかの炎症が起きているサインなのです。先ほどご紹介した変形性膝関節症や半月板損傷などでも起こります。
水がたまる仕組みや、放置した場合のリスクについては、別の記事でまとめています。
▶ 関連記事:膝に水が溜まる原因は?その症状は放置しても大丈夫?
ひざを動かし始めるときに感じる「こわばり」は、変形性膝関節症の初期によくみられる症状です。朝起きたときや長く座っていたあとに動かしにくく、しばらく体を動かしているうちにやわらいでいくのが特徴です。
進行すると、膝が最後まで伸びきらない、深く曲げられないといった 「可動域の制限」 が出てきます。これは軟骨のすり減り、関節液の貯留(水が溜まること)、関節まわりのこわばりなどが重なって起こります。
変形性膝関節症が進行しているケースでは、ひざの軟骨は少しずつすり減っていきます。とくに膝の内側はすり減りやすく、内側のすき間が狭くなることで、脚が外側へ弓なりに曲がる「O脚(内反変形)」へと進んでいきます。
立ったときに左右のひざのあいだに隙間が空く、歩き方や姿勢が変わってきたなど、見た目の変化が現れます。
気をつけていただきたいのは、膝がポキポキ鳴ることが日常的・習慣的に繰り返されている場合です。
ひざを曲げ伸ばしするたびに毎回鳴る、あるいは「以前より明らかに鳴る回数が増えた」
こうしたケースでは、関節の動きがスムーズでなくなっていたり、膝に偏った負担がかかっていたりするサインであることがあります。
とくに変形性膝関節症では、痛みが出るよりも前の段階で、膝の違和感や音の増加が現れることがあると報告[4]されています。こうした音は将来的に症状が出るサインのひとつです。
膝がポキポキ鳴っても痛くない場合でも、将来の膝の健康のためにできることがあります。ポイントは、ひざへの負担を減らし、ひざを支える筋肉を保つことです。
① 体重をコントロールする
体重が増えると、その何倍もの負担が膝にかかるといわれています[5],[6]。
② 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える
膝を安定させる、もっとも大切な筋肉です。椅子に座ったまま片脚をゆっくり伸ばして数秒キープする運動など、無理のない範囲から始めましょう。
③ 関節まわりの柔軟性を保つ
お風呂上がりなど、体が温まったときに太ももの前後をやさしくストレッチします。
ただし、痛みが出るほどの運動は逆効果です。あくまで「無理なく続けられる範囲で」が基本になります。
セルフケアを続けても改善しない、あるいは気になるサインがあるときは、無理に様子を見ず専門医に相談しましょう。
最後に、受診を検討していただきたいタイミングをまとめます。
くり返しになりますが、痛みをともなわない膝のポキポキ音は、その多くが心配のいらない生理的な現象です。ただし、次のようなサインが見られる場合は、膝の内部で何らかのトラブルが起きている可能性があります。ひとつでも当てはまるものがあれば、一度整形外科でご相談ください。
これらは、変形性膝関節症や半月板損傷など、背景にある病気のサインとして現れることがあります。とくに変形性膝関節症は、早い段階でケアを始めるほど、その後の進行をゆるやかにしやすいと考えられています。「痛くないから」と様子を見続けるよりも、気になるサインがあるうちに専門医に相談しておくほうが安心です。
明石市の中山クリニック再生医療センターでは、変形性膝関節症をはじめとする膝のトラブルに対して、神戸大学病院 整形外科と協働し、保存治療から手術治療まで幅広く治療を提供しております。
また、手術以外の選択肢として先進技術である再生医療も提供しております。
長引く膝の不調や気になるサインがある方は、『はじめての方へ』をぜひご覧ください。
コラムのポイント
参考
人工関節以外の
新たな選択肢「再生医療」