監修医師中山 潤一 医師(医療法人社団佳和会 理事長)
日本整形外科学会認定 専門医 / 医学博士 / 明石市整形外科医会会長

立ち上がるとき、階段を降りるとき、しゃがんだ拍子に膝からポキッと音が鳴ると、たとえ痛くなくても「どこか悪いのかな」と気になってしまいますよね。
結論から言えば、 痛みをともなわない膝のポキポキ音は、その多くが心配のいらない生理的な現象です。小さなお子さまから大人まで、誰にでも起こりうるものです。
しかし、なかには注意しておきたいサインが隠れていることもあります。本コラムでは、膝がポキポキ鳴る仕組みから、見逃してはいけないサイン、自宅でできる予防法までを、わかりやすく解説します。

目次

この「ゴリゴリ」という音は、医学的には軋轢音(あつれきおん)と呼ばれます。
本来なめらかに動くはずの膝関節の軟骨がすり減ったり、関節内の組織同士がこすれ合ったりすることで生じる、関節のこすれる音です。
後ほど解説するように、軟骨のすり減りが背景にあるケースでは、放置すると変形性膝関節症が進行していきます。
膝から鳴る音にはいくつかの種類があり、どんなときにどんな音がするかによって、考えられる原因が異なります。
ここでは代表的な3種類をご紹介します。ご自身の膝の音がどれに近いか、確認してみてください。
| 音の種類 | 音の特徴 | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| ポキポキ | 一回鳴ったらしばらく鳴らない | 関節内の気泡がはじける生理的な現象が多い |
| ゴリゴリ | 曲げ伸ばしのたびに繰り返し音がする | 軟骨のすり減り、関節面の摩耗など |
| ミシミシ・ジャリジャリ | 動かすたびにこすれるような感触もある | 軟骨のすり減りが進んでいる場合に多い |
ポイントは、「ポキポキ」という単発の音は健康な人でも鳴ることが多く、多くの場合は心配ないということです。
▶ 関連記事:膝がポキポキ鳴るけど痛くない…大丈夫?原因と見逃せないサイン
一方で、「ゴリゴリ」「ミシミシ」「ジャリジャリ」と連続してこすれるような音は、関節の表面がすり減っているサインのことがあります。とくに、しゃがむ・立ち上がる・階段を下りるといった膝に体重がかかる動作で繰り返し鳴る場合は、整形外科専門医を受診してください。
「ゴリゴリ」という音そのものよりも、音と一緒にどんな症状があるかのほうが重要です。
以下に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
【膝の音 セルフチェック】
これらに当てはまる項目が多いほど、単なる生理的な音ではなく、膝関節に何らかの変化が起きている可能性が高くなります。
とくに「痛み」「腫れ」「動かしにくさ」をともなう場合は、自己判断で様子を見続けず、整形外科で一度膝の状態を確認することをおすすめします。
次の章では、膝がゴリゴリ鳴る具体的な原因を、メカニズムとともに詳しくお話しします。
膝の「ゴリゴリ」「ミシミシ」「ジャリジャリ」という擦れる音は、ほとんどの場合、本来なめらかに動くはずの関節の表面が、なめらかでなくなっていることで生じます。
ここでは代表的な4つの原因を、頻度の高いものから順にご紹介します。ご自身の症状に近いものがないか確認してみましょう。

「ゴリゴリ」音のもっとも多くみられる原因のひとつが、関節軟骨のすり減りです。
膝関節の骨の表面は、本来「関節軟骨」というなめらかでクッション性のある組織に覆われており、骨同士が直接こすれないようになっています。
ところが、加齢や膝への負担の蓄積によってこの軟骨が少しずつすり減ると、関節面がザラザラした状態になり、動かすたびに「ゴリゴリ」とこすれる音や感触が生じます。軟骨は一度すり減ると自然には元に戻りにくいため、擦れる音が続く場合は、関節面の状態が変化しているサインのことがあります。
関節軟骨のすり減りが進行した状態は変形性膝関節症と呼ばれ、ゴリゴリ音の背景としてもっとも多くみられます。
詳しくは、別の記事で解説しています。
膝の前面にある「膝のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)」は、膝を曲げ伸ばしするときに、太ももの骨の溝に沿って上下にスライドします。
この動きがなめらかでなくなると、お皿の裏側の軟骨と骨がこすれ合い、「ゴリゴリ」「ザラザラ」とした音や引っかかりを感じることがあります。
太ももの筋力バランスの乱れや、お皿の位置のわずかなズレなどが背景になることもあり、比較的若い年代やスポーツをする人にもみられるのが特徴です。
膝を支えているのは骨や軟骨だけではありません。
太ももの筋肉(とくに大腿四頭筋) が、関節を安定させる重要な役割を担っています。
加齢や運動不足でこの筋力が衰えると、関節の動きを支えきれずに動きがぎこちなくなり、関節面が不自然にこすれて音が鳴りやすくなります。
また、筋肉や腱がこわばって柔軟性が低下すると、それらがこすれて音の原因になることもあります。
このタイプは、痛みや腫れをともなわなければ、過度に心配する必要のないことが多いものです。
太ももの筋力を保つことで、音が軽減するケースもあります。
加齢にともなって、関節を包む関節包はこわばりやすくなり、滑膜や軟骨もゆるやかに変化して、関節の動きは若い頃よりなめらかでなくなります。
とくに軟骨の表面がなめらかさを失うと、膝を動かしたときに「ゴリゴリ」と擦れる音や感覚が生じることがあります。
このように原因はさまざまですが、大切なのは音そのものよりも「痛みや腫れをともなうかどうか」です。
次は、様子を見てよいケースと、危険なサインを見ていきましょう。
膝のゴリゴリ音で大切なのは、音そのものよりも「どんな症状をともなっているか」 です。
同じ擦れる音でも、心配のいらないものと、早めに確認したほうがよいものがあります。ここでは見分けるためのポイントを整理します。
次のような場合は、生理的な音である可能性が高く、過度に心配する必要はないことがほとんどです。
日常生活に支障がない場合は、まずは太ももの筋力を保つことや、膝に負担をかけすぎないことを意識しながら、経過をみていくとよいでしょう。
一方で、次のような症状をともなう「ゴリゴリ」音は、関節の中で何らかの変化が起きているサインのことがあります。
| サイン | 考えられる状態 |
|---|---|
| 音とともに痛みがある(とくに動き始め) | 軟骨のすり減りなどが進んでいる可能性 |
| 膝が腫れている・水がたまった感じがある | 関節内で炎症が起きている可能性 |
| 膝が完全に伸びない・曲がりきらない | 関節の動きに制限が出ている可能性 |
| 膝が引っかかる・急に動かなくなる (ロッキング) |
関節内に問題が生じている可能性 |
| 以前より音や痛みが明らかに増えてきた | 状態が進行している可能性 |
| 歩き方が変わった・O脚が目立ってきた | 関節の変形が進んでいる可能性 |
とくに 「痛み」「腫れ」「動かしにくさ」 は、危険なサインです。
ひとつでも当てはまる場合は、一度整形外科でご相談いただくことをおすすめします。
「ゴリゴリ」と音が鳴ることが治るかどうかは原因によって異なりますが、膝の動きをなめらかに保ち、違和感やこわばりをやわらげたり、症状の悪化を防いだりすることは可能です。
ここでは自宅で無理なく取り組める方法をご紹介します。
ただし、痛みや腫れをともなう場合は無理に続けず、整形外科専門医にご相談ください。
セルフケアの基本となるのが、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることです。
この筋肉は膝関節を支え、動きを安定させる「天然のサポーター」のような役割を担っています。四頭筋の衰え(筋肉の萎縮)は膝への負担を増やし、関節のなめらかな動きを妨げる一因とされています。そのため四頭筋を保つことは、膝の状態を整える土台になります。
代表的な運動をご紹介します。

【椅子に座って脚上げ運動】

【専門医がアドバイス】
脚を上げるときは反動を使わず、太ももの前側(大腿四頭筋)に力が入っているのを意識しながらゆっくり動かしましょう。つま先を天井に向けると、より効果的です。
筋肉や腱がこわばると、それらが骨に引っかかって音の原因になったり、関節の動きがぎこちなくなったりします。
太ももの前後をやさしく伸ばすことで、膝まわりの柔軟性を保ちましょう。
代表的な運動をご紹介します

【太もも前側のストレッチ】

【専門医がアドバイス】
上体が前に倒れないよう、背筋を伸ばしたまま行いましょう。両ひざは離れすぎないよう、軽くそろえるとより効果的です。

【太もも裏側のストレッチ】

【専門医がアドバイス】
背中を丸めると太もも裏が伸びにくくなります。おへそを太ももに近づけるイメージで、背筋を伸ばしたまま倒すのがコツです。
変形性膝関節症のある過体重・肥満の高齢者を対象とした研究では、体重が1ポンド(約0.45kg)減るごとに、歩行1歩あたりに膝へかかる負荷が約4倍分軽減されることが報告されています[1]。
単純に置き換えれば、体重を1kg減らすことは、1歩ごとに約4kg分の負荷を膝から取り除くことに相当します。
こうしたセルフケアを続けても音や違和感が改善しない場合や、痛み・腫れが出てきた場合は、自己判断を続けず整形外科にご相談ください。
ここでは、膝がゴリゴリ鳴る症状で整形外科を受診したとき、実際にどのような流れになるのかをお話しします。
膝の音や違和感で受診された場合、まずは痛みや腫れの有無、いつからどんなときに音が鳴るのかを伺い、実際に膝の状態を確認していきます。
多くの場合、以下のような流れで進みます。
●問診
膝を実際に触れて、腫れや熱感、押して痛む場所を確認します。
あわせて、膝がどこまで曲がるか・伸びるかを触診し、動きに制限が出ていないかを確認します。
●触診・可動域の確認
膝を実際に触れて、腫れや熱感、押して痛む場所を確認します。
あわせて、膝がどこまで曲がるか・伸びるかを触診し、動きに制限が出ていないかを確認します。
●レントゲン検査
骨と骨のすき間の広さや、骨の変形の有無を確認します。
関節軟骨はレントゲンには写りませんが、骨のすき間が狭くなっていれば、軟骨がすり減っていることが推測できます。
●MRI検査(必要に応じて)
レントゲンでは写らない軟骨や半月板、靱帯といった組織の状態を詳しく調べたい場合に行います。
すべての方に必要な検査ではなく、症状や診察結果をふまえて医師が判断します。
これらの検査によって、「ゴリゴリ」という音の背景に何があるのか、経過をみてよい状態なのか、治療が必要な状態なのかを見きわめていきます。まずは現状を正確に知ることが、適切な対処の出発点になります。
●原因に応じた治療を行います
検査の結果、膝関節に何らかの変化が確認された場合は、その原因や進行の程度に応じて治療方針を検討します。
膝の状態は人それぞれで、必ずしも手術が必要になるわけではありません。
多くの場合、まずはリハビリテーション(運動療法)や薬による治療、注射といった、体への負担が少ない方法から検討していきます。
早い段階で対処を始めるほど、選べる治療法の幅も広がります。
A. 必ずしも病気とは限りませんが、以下の症状を伴う場合は注意が必要です。
膝のゴリゴリという音は、軟骨や半月板がすり減り、関節の表面がざらついて擦れ合うことで生じている可能性が高いです。
とくに動き始めに痛む、膝が腫れている、完全に伸びない・曲がりきらないといった症状をともなう場合は、関節の中で何らかの変化が起きているサインです。代表的なものが、変形性膝関節症です。この場合は、一度整形外科で状態を確認することをおすすめします。
A. ご自身の判断だけで放置するのは危険です。音の種類や痛みの有無を正確に把握するためにも、一度整形外科を受診することをおすすめします。
【放置してはいけない理由は主に以下の通りです:】
A. 膝の「ゴリゴリ」「ミシミシ」という音は、自然に治る可能性は非常に低いです。
動かすたびに繰り返すゴリゴリ音は、関節軟骨のすり減りや半月板の損傷といった、関節内の構造トラブルが原因の可能性が高いからです。
一度すり減った軟骨は自然に元に戻ることはありません。そのため、放置すると将来的に強い痛みを伴う「変形性膝関節症」へ進行するリスクがあります。
膝の「ゴリゴリ」という音は、弾けるような「ポキポキ」音とは異なり、関節面のなめらかさが失われているサインです。
「音だけだから」「年齢のせいだから」と放置せず、気になる症状があるときは、一度状態を確認しておくと安心です。
コラムのポイント
明石市の中山クリニック再生医療センターでは、変形性膝関節症をはじめとする膝のトラブルに対して、神戸大学病院 整形外科と協働し、保存治療から手術治療まで、幅広く治療を提供しております。
また、手術以外の選択肢として先進医療である再生医療も提供しております。
長引く膝の不調や気になるサインがある方は、『はじめての方へ』をぜひご覧ください。
参考
人工関節以外の
新たな選択肢「再生医療」