膝(ひざ)の痛みについて

中山 潤一

監修医師中山 潤一 医師(医療法人社団佳和会 理事長)

日本整形外科学会認定 専門医 / 医学博士 / 明石市整形外科医会会長

膝痛の治療で大切なのは原因の特定と膝の評価

膝痛とは、膝関節の周辺に痛みが生じる状態を指します。原因は多岐にわたり、原因に応じて適切な対処法も異なります。そのため、治療の初期段階では、まず原因を見極めるためにMRIやエコー、触診で多角的に評価します。

まずは問診から

問診では、痛みの症状やケガの経験、これまでの運動習慣(スポーツの種類や頻度)、普段のお仕事の内容、そしてご家族に膝の痛みがある方がいるかどうかなど、痛みだけでなく生活全般についてもお話を伺います。

膝痛の問診で確認する主な内容
いつから痛むか 数週間前/1カ月前/半年前/1年前/ケガの直後
どの部分が痛むか 膝の外側/膝の内側/膝の皿の上/膝の皿の下
どんな時に痛むか 朝起きたとき/夜寝ているとき/正座するとき/立ち上がるとき/歩いているとき/じっとしているとき/階段の昇り降りのとき など
どんな痛み方か 少し痛む/激しく痛む/疼くように痛む など
膝に違和感はあるか 引っかかる感じがする/こわばる/膝を動かすと音がする など
これまでのケガや病気の有無 骨折/脱臼/靭帯損傷/半月板損傷/関節炎 など
家族に関節の病気になった方はいるか 変形性膝関節症/関節リウマチ/痛風 など
生活状況について 職業/趣味/スポーツ経験/姿勢や座り方/住宅環境/同居者の有無 など

視診や触診も実施

膝の見た目や動き、触ったときの状態を丁寧に確認します。関節の変形がないか、軟骨のすり減りが疑われるサインがないかなどをチェックします。

視診や触診で確認する内容
視診 O脚やX脚は見られるか?
膝の曲げ伸ばしはスムーズに行えるか?
触診 押すとどんな風に痛むか?
腫れや熱、曲がりぐあいはどんな感じか?
水が溜まっていないか?

画像検査も活用

問診・視診・触診などで所見を整理したうえで、MRIやエコーなどの画像検査も並行して行い、診断精度を高めます。関節リウマチ、痛風、化膿性関節炎などが疑われる場合には、血液検査や関節液の成分検査なども実施します。

膝痛の主な原因疾患

慢性的な膝痛(ひざつう)の原因として代表的な疾患をご紹介します。

変形性膝関節症

大腿骨と脛骨の表面を覆っている軟骨がすり減っていくことで、痛みが生じる疾患です。進行性の疾患で、軟骨が薄くなっていくと、膝が曲げ伸ばししにくくなり、痛みも増強するため、日常生活に支障をきたすようになります。
原因として多いのは加齢に伴う軟骨の摩耗ですが、肥満や、膝に負担がかかりやすい動作・仕事・スポーツなども影響します。

変形性膝関節症の病態と症状
変形性膝関節症の病態と症状

半月板損傷

半月板

半月板は、大腿骨と脛骨のあいだでクッションの役割を担う組織で、膝の内側と外側に存在します。膝に強い衝撃やねじれの力が加わると半月板が傷つき、亀裂が入ることで痛みが生じます。損傷した半月板の位置によって、痛みの出る場所は異なります。

原因としては、サッカーのような左右への切り返し動作が多いスポーツや、交通事故などのケガで膝に大きな負荷がかかるケースが代表的です。一方で、60代以降の方は加齢変化により傷みやすく、軽い衝撃や日常動作の負担でも損傷することがあります。


その他に考えられる疾患

膝の痛みの原因はさまざまです。主な要因としては、加齢やスポーツなどによる膝への負担が挙げられますが、それ以外の原因で生じることもあります。

■スポーツなどによる膝の酷使が原因の疾患
靭帯損傷、鵞足炎、腸脛靭帯炎(ランナー膝)、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)など

■その他の原因による疾患
ベーカー嚢腫、関節リウマチ、関節内遊離体(関節ねずみ)など

■急に膝が痛くなる疾患
偽痛風、化膿性関節炎(感染)など

その他の疾患の症状などについては、下記コラムでご覧いただけます。
▶ 膝が痛い!よくある10の原因と解決法を医師が解説

症状

「膝が痛い」と言っても、痛みの症状はさまざまです。痛みの症状によって考えられる原因も異なります。

膝の外側が痛い

膝痛

膝の外側に痛みがある場合、原因としては腸脛靭帯炎、外側半月板損傷、外側側副靭帯損傷などが考えられます。

膝の内側が痛い

膝痛

膝軟骨のすり減り、鵞足の炎症、内側半月板の損傷、内側側副靭帯の損傷、内側滑膜ヒダの炎症などが考えられます。

膝の裏側が痛い

膝痛

膝の裏側に痛みがある場合、靭帯や半月板などの損傷・炎症だけでなく、思わぬ病気が隠れている可能性もあるので注意が必要です。

膝の上が痛い

膝痛

膝のお皿(膝蓋骨)や、膝の上にある筋肉(大腿四頭筋)の炎症が考えられます。膝を酷使するスポーツによるオーバーユース(使い過ぎ)が原因となることが多いです。

治療法

膝の痛みを改善するためには、症状に合わせて適切な治療法を選択することが大切です。ここでは、膝の痛みに対して行う主な治療法をご紹介します。

トレーニング・ストレッチ

ストレッチ

筋力の低下によって膝に負担がかかっている方に向けた運動療法です。変形性膝関節症、半月板損傷、鵞足炎、腸脛靭帯炎(ランナー膝)、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)などの症状がある方におすすめの治療で、ご自宅でも簡単に実践できます。

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸注射

膝の軟骨がすり減る変形性膝関節症や、半月板損傷などの方に行う治療法です。ヒアルロン酸を膝関節内に注射することで関節の滑らかさを補い、膝の動かしやすさの改善や痛みの軽減が期待できます。効果の目安は1~2週間程度で、定期的に継続していきます。

膝の手術

手術

運動療法やヒアルロン酸注射などを行っても痛みが緩和せず、日常生活に支障が出ている場合には、手術療法を検討します。手術は主に関節鏡視下手術、脛骨骨切り術、人工関節置換術の3つに分類され、膝の状態に応じて手術方法を検討します。

再生医療

再生医療

「ヒアルロン酸注射が以前ほど効かない気がする。でも手術は避けたい。」そんなお悩みをお持ちの方に、再生医療という選択肢があります。ご自身の血液または脂肪から有効成分を抽出し、膝に注射することで炎症を抑え、痛みの軽減や動きやすさの改善が期待できます。日帰りでの治療が可能で、体にも低負担、自己組織を使うため副作用のリスクが低いことが特徴です。

ひざ(膝)の痛みに関するよくある質問

ひざの痛みは自分で治せますか?

筋力トレやストレッチによって、症状を緩和することは可能です。

「治す」を「完全に元の状態へ戻す」と捉える場合は難しいです。たとえば変形性膝関節症では、一度すり減った軟骨を復活させることはできません。ただし、肥満の改善や、膝を支える筋力の強化によって、症状の悪化や進行を緩やかにすることは可能です。筋力を高める運動と、関節まわりをしなやかに保つストレッチを、無理のない範囲で継続することが大切です。

ひざが痛い時にやってはいけないことは?

我慢して無理に動かしたり、運動を続けることはやめましょう。

まず、膝に痛みが出る動作や運動はいったん中止してください。
たとえば変形性膝関節症のように、痛みの背景に関節内の炎症がある場合、無理に動かし続けることで炎症が強まり、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
安静にしていても膝が痛む場合は、速やかに整形外科専門医を受診し、必要な検査や治療を検討してください。運動療法は痛みが和らいできてから開始し、少しずつ無理のない範囲で進めるようにしてください。

ひざが痛い時はどうすればいいですか?

まずは安静にしてください。腫れや熱感がある場合は冷やし、痛みが少し落ち着いてきたら温めてください。

まずは無理をせず、いったん安静にしましょう。日常生活動作は無理をしない範囲で続けて構いませんが、スポーツはお休みし、重い荷物や長時間の歩行など「膝に負担がかかること」は控えてください。腫れや熱っぽさがあるときは患部を冷やします。数日行って痛みが改善したら温めます。入浴の際、湯船の中でよく温めてから痛みのない範囲でゆっくり曲げ伸ばしをするのがおすすめです。
それでも良くならない、または痛みが続く場合は、早めに整形外科専門医に相談しましょう。

ひざが痛くなる原因は何ですか?

スポーツなどによる損傷だけでなく、関節組織の加齢に伴う変化や、内科的な疾患の影響などが原因です。

膝の痛みは「これが原因」と一つに決めつけられないことが多いです。加齢や肥満の影響による軟骨がすり減り(変形性膝関節症)半月板・靭帯の損傷、関節の炎症(リウマチ、偽痛風など)、筋肉・腱の炎症(ランナー膝など)、骨折など、さまざまな可能性があります。
また、膝の使いすぎや転倒などの外傷、日々の生活習慣も関係します。自己判断せず、整形外科専門医に相談しましょう。

監修医師

中山 潤一

中山 潤一 医師

(医療法人社団佳和会 理事長)

経歴

  • 1995年 神戸大学整形外科入局
  • 2001年 加古川市民病院整形外科 副医長
  • 2005年 神戸逓信病院 医長
  • 2008年 神鋼加古川病院 医長
  • 2013年 中山クリニック 理事長就任、院長兼任

資格・免許

  • 日本整形外科学会認定 専門医
  • 日本整形外科学会認定 スポーツ医
  • 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
  • 日本整形外科学会認定 リウマチ医
  • 日本整形外科学会認定 運動器リハビリ医
  • 日本リウマチ学会認定 専門医
  • 日本リハビリテーション学会臨床認定医
  • 日本骨粗鬆学会認定医
  • 厚生労働省義肢装具適合判定医

所属学会・活動

  • 明石市整形外科医会会長
  • 明石市医師会理事
  • 日本整形外科学会
  • 日本リウマチ学会
  • 日本骨粗鬆学会
  • 日本リハビリテーション学会