膝に水が溜まる原因は?その症状は放置しても大丈夫?専門医監修

膝に水がたまって痛みを感じるイメージ

「膝に水が溜まる」とは、関節内の炎症をきっかけに関節液が必要以上に増えてしまう状態で、医学的には関節水腫といいます。膝の腫れぼったさや曲げにくさ、動き始めの違和感といった症状が特徴的です。

こうした症状の背景には、関節内で起きている炎症や軟骨のすり減りといった、目には見えない異変が関係しています。放置しても自然に改善するケースはまれで、炎症の原因を見極めたうえで対処することが大切です。
本コラムでは、膝に水が溜まる仕組みと主な原因、受診の目安について、専門医の立場から詳しく解説します。

中山 潤一

監修医師中山 潤一 医師(医療法人社団佳和会 理事長)

日本整形外科学会認定 専門医 / 医学博士 / 明石市医師会理事 / 明石市整形外科医会会長

膝に溜まる水の正体は?

膝に水がたまる仕組みを理解するために、まずは膝関節の内部について知っておきましょう。

膝関節の構造

膝関節の構造図私たちが歩いたり階段を昇降したりする動作をスムーズにするために、関節の内部には幾重もの精巧な構造が備わっています。

例えば、骨の表面は関節軟骨と呼ばれるつるつるとした組織で覆われ、骨と骨の間には繊維軟骨のクッションが存在し、荷重を分散させる働きを担っています。そして関節全体を関節包という袋が包み、その内壁は滑膜というしなやかな膜で覆われています。さらにその中は、関節液という少し粘り気のある液体で満たされています。

こうした複雑な構造のなかでも、関節のなめらかな動きを実現するうえで特に重要な役割を担っているのが「関節液」です。

「膝の水」と関節液の関係

膝に溜まる水の正体は、この「関節液」という液体です。この液体には、関節がスムーズに動くための潤滑作用と、軟骨組織に栄養を供給する作用があります。
正常な膝関節でも、0.5〜4mL程度の関節液が存在し、滑膜が古い関節液を吸収しながら新しい関節液を分泌することで、この量を一定に保っています。

ところが、何らかの原因で滑膜に炎症が生じると、このバランスが崩れて関節液が過剰に分泌されます[1]。その結果、関節内に液体が次第に溜まり、膝が腫れ上がる状態になるのです。医学的にはこの状態を関節水腫(かんせつすいしゅ)と呼びます。

関節液の役割
関節液の循環図

膝に水が溜まる原因は?

膝関節に水が過剰に溜まる背景には、多くの場合、滑膜の炎症に起因することがほとんどです。主な原因としては、変形性膝関節症、半月板損傷、関節リウマチ、偽痛風などが考えられます。

原因① 変形性膝関節症

膝に水が溜まる原因疾患のなかで、中高年の方に最も多くみられるのが変形性膝関節症です。年齢とともに関節内の軟骨や半月板が摩耗し、そのすり減ったかけらが滑膜を刺激することで炎症を引き起こします。
放置すると関節液の過剰分泌が止まらず、腫れや痛みが慢性化するおそれがあるため、できるだけ早く治療を開始することが重要です。

原因② 半月板損傷

半月板損傷も、膝に水が溜まる代表的な原因のひとつです。半月板は、膝関節内にある線維軟骨でできた組織で、スポーツ中の急な方向転換や強い衝撃によって損傷することがあります。半月板が傷つくと関節内の滑膜に炎症が広がり、関節液が過剰に分泌されて膝に水が溜まる原因となります。

原因③ 関節リウマチ

関節リウマチは、免疫の異常によって、自身の細胞や組織を攻撃してしまう自己免疫疾患です。膝関節では、滑膜を免疫細胞が攻撃してしまうことで炎症を引き起こし、関節液が過剰に分泌されることで水が溜まる原因となります。

原因④ 偽痛風

偽痛風は、ピロリン酸カルシウムの結晶が関節内に沈着することで急性の炎症を引き起こします。膝関節に発症することが多く、痛風(尿酸の結晶)とは原因物質が異なりますが、症状が類似しているため「偽痛風」と呼ばれています。

抜いた水の色で分かる、原因となる病気

ここまでご紹介したように、膝に水が溜まる原因はさまざまですが、実は抜き取った関節液の色や状態を確認することで、炎症を引き起こしている原因疾患をある程度推定することができます。整形外科では、関節穿刺(かんせつせんし)と呼ばれる処置で、注射器を使って関節液を抜き取ります。

正常な関節液は粘り気のある黄色みの透明色をしていますが、炎症の原因によってその性状は特徴的に変化します。以下の表は、関節液の色・状態と、それぞれで考えられる代表的な原因疾患をまとめたものです。

■関節液の色・状態から推定される原因疾患
抜いた水の色 考えられる疾患
黄色みのある透明色(粘り気あり) 正常な関節液
濃い黄色(粘り気が少ない) 変形性膝関節症
赤色〜褐色 骨折・半月板損傷・靭帯損傷などの外傷
白濁色 化膿性関節炎(感染症)、痛風・偽痛風

膝に溜まった水は放置しても治る?

では、膝に水が溜まっているのに気づいた場合、放置しても自然に治るのでしょうか。

結論から言えば、膝に水が溜まった状態を放置しても、自然に治ることはありません。関節内の炎症が続く限り、水は溜まり続けるためです。

溜まった水を放置することで、水の中に含まれるサイトカイン(炎症を引き起こす物質)が炎症と痛みをさらに悪化させるおそれもあります[2]

まずは整形外科を受診し、水を抜く処置が必要です。

膝に水が溜まるのは自分で治せる?対処法は?

膝に水が溜まる症状は、セルフケアだけで根本的に改善することは困難ですが、受診するまでの間、症状の悪化を防ぐための対処は可能です。

まず気をつけたいのが「冷やす・温める」の使い分けです。

ケガなどで急に腫れた場合(急性期)は冷却が基本で、温めると炎症が強くなることがあります。反対に変形性膝関節症のような慢性疾患では、冷やすと痛みが強くなることがあるため、温めたほうが楽になることもあります。

迷った場合は自己判断を避け、悪化させないことを最優先にしてください。

受診までにできる対処としては、次のようなことが挙げられます。

  1. 痛みが強い日は安静を優先。階段・しゃがみ込みなど高負荷の動作をできるだけ避ける
  2. 腫れがあるときはサポーターで軽く固定する(締めすぎは逆効果)
  3. 急性の腫れや熱感には冷却、慢性的な痛みには保温など、状態に応じた使い分け
  4. 痛みが増すような運動・ストレッチ・強いマッサージは行わない

膝に水が溜まる状態を放置したり、対処法を誤ったりすると 、症状が悪化するおそれがあります。まずは整形外科を受診し、水を抜いたうえで原因に応じた治療を相談しましょう。

放置は危険!受診を急ぐべきサイン

先ほどご紹介したように、膝に水が溜まる症状は早めの受診が基本ですが、なかでも以下のようなサインがみられる場合は、できるだけ早く整形外科を受診してください。放置すると症状が急速に悪化したり、重篤な疾患が隠れていたりするおそれがあります。

  • 膝が熱を帯びている/見た目に赤みや腫れがある
  • 歩行や階段で体重をかけられないほど痛みが強い
  • 転倒やスポーツなど、外傷をきっかけに急に腫れた
  • 発熱や強い倦怠感をともなっている
  • 繰り返し水が溜まる(何度も再発する)
  • 日を追うごとに腫れが大きくなり、膝の曲げ伸ばしができない

これらに当てはまる場合、膝の中で強い炎症や感染が起きていたり、靭帯や半月板の損傷が隠れていたりする場合があります。

膝に水が溜まったときの治療法

では実際に整形外科を受診すると、どのような治療が行われるのでしょうか。膝に水が溜まる症状に対しては、原因や重症度に応じて治療法が使い分けられます。ここでは代表的な5つの治療法について、ご紹介します。

膝の水を抜く(関節穿刺)

痛みや腫れの軽減、関節の可動域の改善を目的として、注射器で関節液を抜く処置です。

膝に針を刺して関節液を抜く処置のため、短時間で終了します。

ただし、原因となる疾患が改善しない限り、再び水は溜まります。あくまで対症療法となります。

注射

滑膜に炎症が生じている場合、まずはヒアルロン酸やステロイドの注射で炎症を抑えるのが一般的な治療の流れです。

ただし、ステロイドは炎症を素早く鎮める一方で、長期間にわたり繰り返し関節内注射を行った場合、軟骨量の減少が認められたとの報告[3]もあり、関節構造への影響が懸念されています。

そのため、回数を限定して慎重に使うべき薬剤と位置づけられています。

近年では、エクソソーム注射や再生医療のPRP療法などが、新たな選択肢として注目されています。これらはステロイドのような組織への悪影響が現時点で報告されておらず、滑膜の炎症を抑えることで関節液の貯留を防ぐ効果が期待されています。

手術

変形性膝関節症や半月板損傷などが重症化し、他の治療法では改善が難しい場合には、病態や進行度に応じて外科手術を検討します。

変形性膝関節症や関節リウマチで軟骨の摩耗が高度な場合は人工関節置換術、半月板損傷であれば関節鏡を用いた縫合術や部分切除術、前十字靭帯の断裂に対しては靭帯再建術が選択肢となります。

再生医療

再生医療は、患者さまご自身の血液や脂肪から採取した組織や成分を使って、損傷した組織の回復を促す新しい治療法です。

保険適用外の自由診療となりますが、メスを使わないため体への負担が少なく、入院や長期のリハビリも必要ありません。治療後はそのままお帰りいただけるので、日常生活への復帰もスムーズです。

▶ ひざの再生医療について詳しくはこちら

リハビリ

関節穿刺や注射などの処置が一段落したら、次のステップとしてリハビリテーションに移行します。

太ももの筋力訓練や膝まわりのストレッチを中心に、関節の可動域と安定性の回復を図ります。

膝に水が溜まる原因はMRI検査で見極める

mri検査膝に水が溜まる背景には、さまざまな疾患や病態が隠れています。
根本の原因に対処しなければ炎症が続き、水を抜いても繰り返し溜まってしまうことは珍しくありません。

こうした原因を正確に見極めるうえで、当院が特に力を入れているのがMRI検査です。MRIは半月板や軟骨、靭帯といった膝関節内の各組織を詳細に映し出せるため、水が溜まる原因の特定に大きく役立ちます。

中山クリニック再生医療センターでは、原因の究明だけでなく、現在の膝の状態を踏まえた今後の方針についても、わかりやすくご説明・ご提案しております。

長引く膝の痛みや膝に水が溜まってお困りの方は、「はじめての方へ」をぜひご覧ください。

はじめてのご来院予約

コラムのポイント

  1. 膝に水が溜まる原因は滑膜の炎症による
  2. 膝に水が溜まった場合は、早めに抜くことが重要
  3. 放置しても自然には治らないため、原因に応じた治療が必要

人工関節以外の
新たな選択肢「再生医療」

変形性膝関節症の方、
慢性的なひざの痛みにお悩みの方は
是非ご検討ください。

関連するコラム

予約Web予約はこちら