監修医師中山 潤一 医師(医療法人社団佳和会 理事長)
日本整形外科学会認定 専門医 / 医学博士 / 明石市医師会理事 / 明石市整形外科医会会長

「最近、なんだか膝が腫れぼったい」
「正座をすると膝がパンパンに張って痛い」
そんな違和感から、「もしかして膝に水が溜まっているのでは」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
膝に水がたまる症状は、決して珍しいものではありません。ただ、たまる場所によって腫れ方や痛みの出方が大きく異なり、原因も変形性膝関節症から滑液包炎までさまざまであることは、あまり知られていません。
本コラムでは、整形外科専門医の監修のもと、膝に水がたまる4つの場所と腫れ方の違いを実際の写真とともに解説します。

目次
まず、「膝に水が溜まる原因」からお話しします。私たちの膝関節の中には、もともと「関節液(かんせつえき)」と呼ばれる液体が少量存在しています。これは、関節の動きをなめらかに保つ潤滑油のような役割を担っています[1]。つまり、健康な膝にも水は存在しています。
では、なぜ膝が腫れ上がるほど関節液が増えてしまうのでしょうか。
その最大の原因は、関節内で起こる「炎症」です。
変形性膝関節症、半月板損傷など、関節内に炎症をもたらす疾患では、滑膜が刺激を受けて滑液が過剰に分泌されます。その結果、関節内の関節液量が異常に増加し、膝が腫れた状態となります。原因疾患について詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。
では、膝のどの場所に水が溜まるのか、次の章で具体的に見ていきましょう。
関連記事:膝に水が溜まる原因は?その症状は放置しても大丈夫?
「膝に水が溜まる」と一口に言っても、膝関節の構造上、水が溜まる場所は大きく分けて4つあり、場所によって腫れ方や痛みの現れ方、原因となる疾患が異なります。ここからは、4つの場所それぞれの特徴を、実際の症例写真とあわせてお話しします。
まず最も多いのが、この関節腔に水が溜まるケースです。
関節腔とは、膝のお皿の骨(膝蓋骨)や太ももの骨(大腿骨)、すねの骨(脛骨)を包んでいる関節包という袋の中の空間を指します。先ほど説明した関節液が溜まっている、まさに膝の中心部です。
ここに炎症が起きて水が溜まると、膝のお皿の周りが全体的に、ぼんやりと腫れていきます。
写真のように、腫れた膝はお皿の輪郭がはっきりしなくなるのが特徴です。

関節腔に水がたまると、関節包が内側から圧迫されて膨張するため、以下のような症状が現れやすくなります。
●ズキズキとした強い痛み(疼痛)
●膝が熱を持つような感覚(熱感)
●膝の曲げ伸ばしがしにくい(可動域制限)
我慢できないほどの痛みがある場合は、この関節腔に水が溜まっている可能性が高いと言えるでしょう。
「痛みはあまりないけど、膝の一部がブヨブヨと腫れている…」という方は、この滑液包が原因かもしれません。
滑液包とは、関節腔とは別の、膝の周りにあるクッションの役割をする小さな袋状の組織のことです。膝の周りには、10個以上の滑液包が存在しています[2]。
特に、正座などで膝をつく動作が多い方は、お皿のすぐ上や、お皿のすぐ下にある骨の出っ張り部分にある滑液包が刺激されて炎症を起こし、水が溜まることがあります。これを「滑液包炎」と呼びます。
関節腔に水が溜まる場合と異なり、膝全体ではなく、特定の部位だけが局所的に腫れるのが特徴です。触れるとやわらかく、波打つような感触があります。


滑液包炎によって膝に水がたまった場合は、以下のような症状が現れやすいのが特徴です。
●痛みがない、または押すと少し痛い程度
●熱感はほとんどない
●膝の曲げ伸ばしは普通に行える
痛みが軽いため「腫れているけれど痛くないから大丈夫」と放置されがちですが、原因によっては炎症が長引くこともあるため、気になる腫れがあれば一度受診をおすすめします。
「膝に硬いコブみたいなものができた…」という方は、ガングリオンが原因かもしれません。

ガングリオンは、関節を包む袋(関節包)や腱を包む袋(腱鞘)から、ゼリー状の関節液成分が漏れ出してできる、こぶ状のしこりです[3]。手首にできる印象を持たれる方が多いかもしれませんが、膝にも発生します。
見た目では判別しにくいこともありますが、超音波検査(エコー)をすれば確認することができます。袋がブドウの房のように、複数個できることも珍しくありません。

膝のガングリオンは、クッションの役割をする半月板や靭帯の損傷が原因で発生していることがあり、放置すると膝の機能に問題が出る可能性があります。
痛みや、膝が完全に伸びない・曲がらないといった症状がある場合は、早めに専門医を受診しましょう。
最後にご紹介するのは、膝の裏側です。「膝窩(しっか)」と呼ばれます。
膝の裏側に水が溜まってコブのようになる状態を「ベーカー嚢腫」と呼びます。これは、関節腔(写真1枚目)で増えすぎた水が、圧力に負けて後方へ逃げ出し、膝の裏側にある袋に流れ込んで膨らんでしまう状態です[4]。

滑液包炎やガングリオンと同様に、痛みがないことが多いのが特徴です。「膝を曲げた時に何か挟まっているような違和感がある」程度で、ご自身では気づかないこともあります。
ここまで、膝に水が溜まる4つの場所と、それぞれの腫れ方・症状についてお話ししてきました。改めて、4つの特徴を一覧表で整理してみましょう。ご自身の膝の状態と見比べながら、どのタイプに近いかチェックしてみてください。
| 場所 | 腫れの範囲 | 痛み | 触った感触 | 主に疑われる疾患 |
|---|---|---|---|---|
| ①関節腔 | 膝のお皿全体 | ズキズキとした強い痛み | 張りつめた感じ | 変形性膝関節症・半月板損傷など |
| ②滑液包 | 局所的 (お皿の上下など) |
ほとんどなし〜 押すと軽い痛み |
ブヨブヨ・波打つ感触 | 滑液包炎 |
| ③ガングリオン | 局所的なコブ | なし〜軽度 | 硬いしこり | 半月板・靭帯損傷の合併 |
| ④膝窩 | 膝の裏 | なし〜違和感程度 | 弾力性のあるコブ | 変形性膝関節症・半月板損傷の合併 |
このように、水が溜まる場所によって、腫れ方や症状の出方には大きな違いがあります。
ただし、複数の場所に同時に水が溜まっているケースも少なくありません。例えば、関節腔に水が溜まっている方の多くに、ベーカー嚢腫を合併していることが知られています[4]。
次に、見た目だけではわかりにくい初期症状のサインについてお話しします。
「写真で見るほど膝が腫れているわけではないけれど、なんとなく違和感がある」
こうした状態は、膝に水が溜まり始めた初期段階によくみられます。この時期は見た目の変化が乏しく、健康な膝と見分けがつきにくいことがあります。
ここでは、見た目の変化が出る前に気づきやすい初期症状のサインを、3つのポイントに分けてお話しします。
最も多くの患者さまが訴えられるのが、朝起きた直後や、長時間座ったあとに膝を動かしたときの「こわばり」や「張り」です。
関節液が少しずつ増えてくると、関節包が内側からわずかに押し広げられた状態になります。動かしているうちに気にならなくなることが多いため、「年のせいかな」「冷えのせいかな」と見過ごされがちですが、膝に水が溜まり始めた段階の代表的なサインです。
膝を深く曲げたとき、お皿の周りが詰まったように感じたり、最後まで曲がりきらなかったりする違和感も、関節腔に水が溜まり始めた初期によくみられます。
膝関節は深く曲げるほど内側の圧力が高まる構造になっているため、関節液がわずかに増えただけでも敏感に感じ取れる動作です。
ご自身でスマートフォンなどで膝の写真を撮って確認する際は、以下のポイントを左右の膝で比べてみてください。
●膝のお皿(膝蓋骨)の輪郭がはっきり見えるか
●お皿の上のくぼみが浅くなっていないか
●正面から見て左右の太さに差はないか
●膝を曲げたときにできる皮膚のシワの数に左右差はないか

健康な膝はお皿の輪郭が明瞭で、その上下にわずかなくぼみが見えます。膝に水が溜まり始めると、このくぼみが浅くなり、膝全体がふっくらとした印象に変化していきます。
「写真で見ると、左右でなんとなく違う気がする」という段階で気づいて治療を始められれば、原因疾患の進行を抑えることが期待できます。
関連記事:膝に水が溜まる原因は?その症状は放置しても大丈夫?
では、実際に整形外科を受診した場合、どのような流れで治療が進むのでしょうか。次の章で具体的にお話しします。
整形外科を受診すると、一般的には以下のような流れで治療が進みます。
症状が出始めた時期、発症のきっかけ、既往歴などをお伺いしたうえで、レントゲン・超音波(エコー)検査で関節内の状態を確認します。必要に応じてMRI検査を追加し、半月板や靭帯、軟骨の状態まで詳細に評価します。
腫れや痛みが強い場合は、関節穿刺(かんせつせんし)で関節液を抜く処置を行います。痛みの軽減と同時に、抜き取った関節液の色や性状を観察することで、原因疾患を推定する手がかりにもなります。
関連記事:膝の水を抜くのは一時しのぎ?抜いた水の色でわかる膝の状態
関節液を抜いただけでは、水が溜まる根本原因は解消されません。原因疾患に応じて、以下のような治療を組み合わせていきます。
●薬物療法(消炎鎮痛薬、ヒアルロン酸注射など)
●リハビリテーション(大腿四頭筋の筋力強化、可動域訓練)
●再生医療(PRP療法、APS療法、培養幹細胞治療)
●手術療法(関節鏡視下手術、人工関節置換術など)
特に再生医療は、ヒアルロン酸注射などの保険診療で十分な効果が得られなかった方や、手術には踏み切れない方にとって、新しい選択肢として注目されている治療法です。患者さまご自身の血液や脂肪組織から採取した成分を用いるため、体への負担が比較的少ない点も特徴です。
今回は、膝に水が溜まる4つの場所と、それぞれの腫れ方・見た目の特徴について、症例写真をまじえてお話ししました。
最終的に原因を見極めるためには、整形外科専門医による診察と画像検査が必要なります。少しでも気になる症状があれば早めに受診しましょう。
中山クリニック再生医療センターでは、原因の究明だけでなく、現在の膝の状態を踏まえた今後の方針についても、わかりやすくご説明・ご提案しております。
長引く膝の痛みや膝に水が溜まってお困りの方は、「はじめての方へ」をぜひご覧ください。
コラムのポイント
参考
人工関節以外の
新たな選択肢「再生医療」